4/28 「鞭」


梶井基次郎の小説、檸檬の冒頭はこうだ


えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終圧おさえつけていた。焦躁と言おうか、嫌悪と言おうか――酒を飲んだあとに宿酔があるように、酒を毎日飲んでいると宿酔に相当した時期がやって来る。それが来たのだ。これはちょっといけなかった。結果した肺尖カタルや神経衰弱がいけないのではない。また背を焼くような借金などがいけないのではない。いけないのはその不吉な塊だ。以前私を喜ばせたどんな美しい音楽も、どんな美しい詩の一節も辛抱がならなくなった。蓄音器を聴かせてもらいにわざわざ出かけて行っても、最初の二三小節で不意に立ち上がってしまいたくなる。何かが私を居堪らずさせるのだ。それで始終私は街から街を浮浪し続けていた。


この感情を、僕ももちろん知っていること
こんなに綺麗に言葉という形を与えたこと
6時間目の教室でひとり、目を輝かせていたことだろう


発見のある朝だった
いつもと違って見た昼だった
見覚えのある夜だった


最近は
明日を思い描こうとする
こんなの初めてでよくわからない
水に浸しただけの筆は一線なぞって止まってしまう

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がらんどう